我が初恋の行方
長富忠裕
昭和一九年。私は生まれました。
小学校に入るまで私の町には幼稚園がなかったので、ほぼ無菌状態で小学生になりました。
同じクラスにとても可愛い女の子がいました。私はすっかり恋の病に感染してしまいました。でも、不思議なことにその子と仲良くなり、恋は成就したかのようでした。
二学期に席の配置替えがありました。当時、今とは違い机は一人に一つではなく、二人でひとつ、横並びで男の子と女の子が座りました。私はその子と同じ机に座ることになったのです。当然、嬉しいことなのに、何故か私は急にその子に乱暴になり、ことあるごとにその子をいじめました。きっと私はその子が本当は好きでないということを他の子供に示したいと考えたからではないかと思います。
すっかりその子に嫌われてしまいました。
秋になり学芸会があり、私の学年は「白雪姫」をすることになりました。「白雪姫」は一クラス五十名、五クラスの生徒の中からその子が選ばれました。私はチビで小太りだったので相手役の王子様はもちろん無理でしたが、白雪姫を囲む七人の一人に選ばれました。
稽古が始まって二、三日語、突然私は小人の役をはずされ、お王女の持つ鏡の役に変えられました。王女が鏡に向かって「鏡よ、鏡。世界で一番美しい人は誰?」と問うと、鏡の私は「世界で一番美しい人は、もちろんあなたです」と歌いながら答えるのです。王女の持ち物の鏡ですから「よいしょ」するのはよしとしても、白雪姫をけなすのですからたまりませんでした。
そんないろんなことのあった一年が終わり、二年生になりました。始業式の日、先生から女の子が転校したと報告がありました。
私の小さな初恋が終わった春でした。
元・日本テレビプロヂューダー 「火曜サスペンス」などドラマ部門を担当
おとなはみんな子どもだった