池内紀の旅みやげ

池内 紀の旅みやげ(最終回・50) 終着駅─横浜市・鶴見線

JR鶴見線は鉄道マニアの元祖宮脇俊三が書いて以来、ノリ鉄組の聖地のようなところらしい。京浜工業地帯の埋め立て地を走り、鶴見と扇町を結んでいる。これを主線とすると、支線が二本、まるでつり革のようにブラ下がっている。一方の終...

池内 紀の旅みやげ(49) 三筋の町──滋賀県・水口町

三味線は三弦でできている。その三本の糸の両端を結ぶと、どうなるか。まん中に筋のある細長い袋になるだろう。紡錘形、あるいは昔の飛行船に似ている。近江(おうみ)の水口町(みなくちちょう)はそんな形をしているらしい。 なにかの...

池内 紀の旅みやげ(48) 謎ずくめ─兵庫県・石の宝殿

山陽新幹線が新神戸駅を出て、明石を過ぎ、姫路に近づいてくると、右手に石切り場が見えてくる。小山全体が石でできているらしく、大きく切り開いた切断面が淡い肌色の垂直の壁をつくっている。みるみる近づき、よく見ようとする間もあら...

池内 紀の旅みやげ(47) 絞りの里─愛知県有松

東海道五十三次はよく知られている。お江戸日本橋を発って京の五条まで五十三の宿場がつないでいた。江戸からいうと品川宿が一番で、川崎、神奈川、保土ヶ谷、戸塚。歌川広重の版画シリーズはマッチ箱にも使われて、いつのまにやらな...

池内 紀の旅みやげ(46)豊前のグランド・キャニオンー福岡県香春町

無人駅でおりて駅前広場へ出たとたん、足がとまった。正面の高みに奇妙なものがあって、しばらくまじまじとながめていた。判断がつかなかったからである。岸壁が削(そ)いだようにのびていて、一カ所がパックリ口をあけ、そこだけが白い...

池内 紀の旅みやげ(45) 大黒さま恵美須さま──福島県柳津

ふつうは「柳津(やないづ)の虚空蔵(こくうぞう)さま」。正式には円蔵寺の福満虚空蔵尊といって、日本三虚空蔵の第一だそうだ。 只見線の会津柳津のすぐ近く、開基が大同二年(八〇七)というから、とてつもなく古い歴史をもっている...

池内 紀の旅みやげ(44)名寄教会─北海道名寄市

北海道を道南、道東、というぐあいに、方角によって区分したりするが、道北は北の果て稚内を頂点とする三角であって、名寄(なよろ)市はそのエリアの中心都市である。古い世代は大相撲の名寄岩でなじんだものだ。「老雄名寄岩」といった...

池内 紀の旅みやげ(43)江戸の掘抜──山梨県河口湖

大きな川や湖には水量を示すスケールが立てられているものだ。専門用語でどういうのか知らないが、目盛りを刻んだ細い板であって、大きな物差し状のものが水からスックと突き立っている。 ときおり、そのタテの標識版に小さな横板がつい...