おとなはみんな子供だった

広島原爆ドームの画像

戦争の風景

寺本幸司(音楽プロデューサー) 昭和十二年(一九三七年)七月七日、中国の北京市郊外の永定河にかかる盧溝橋で日中両軍が衝突し、太平洋戦争に繋がる日中戦争の発端となった。妻子ある者を問わず、日本全土に徴兵令が下り、多くの男た...

山あいの町

伊藤謙介  私は山あいの町で生を受けました。 中国山地の奥深く抱かれ、清流に沿って縫うように走る街道の両側に、張りつくように民家が立ち並んでいました。   そんな田舎町に、日華事変の年に生まれ、太平洋戦争の開戦を四歳で迎...

B29を見た男     浜井 武

一九三八年(昭和十三年)生まれの私は、敗戦の日を、小学一年生のとき、二度目の疎開地だった愛知県の山奥で迎えました。 祖父が日本の植民地政策に乗っかって、満州と朝鮮に、「大阪屋号書店」という出版社兼取次業(戦後の取次店・大...

ガキのころ       土山勝廣

「おまえ、俺の子供の頃の話、聞きたいか?」 「別に、聞きたかねえな」 「そりゃそうだろう。他人のガキの頃の話なんて、興味ないからな」 「なにか、特別面白い話でもあれば別だが」 「面白い話って、どういうことだ?」 「たとえ...

パンツ泥棒          藤野健一

小学五年生の夏休みの事だ。 家の近くにある私立の中学校が、夏の期間中プールを安い料金で一般に開放した。昭和二十年代のことで、まだプールは珍しく、おとなも子供も涼を求めて押しかけた。大盛況で、泳ぐというより水に浸かるだけの...

コロナ感染でよみがえるあの日あの頃   阿部剛

7月4日アメリカ独立記念日、バカでかい星条旗をグランドいっぱいに広げ、さあ、大谷翔平がアストロズ戦先発投手だあ。例によって奪三振ショーで浮かれていたが、エンジエルスのアホ打線が鳴かず飛ばず。結局ボロ負け。毎度のことながら...

昭和の大家族の風景    岡崎正隆

私の幼少期を語るには父のことに触れざるを得ません。なにしろ、私が誕生した時、父はすでに50歳でした。父は明治27年、日清戦争の年に生まれたのです。因みに、芥川龍之介は明治25年生まれ。 父と私の年の差は50歳、パパと呼ん...

そして名古屋の子どもたち    校條 剛

元・新潮社       今回は、私の幼少期の思い出を書いてほしいというリクエストです。 私は小学校を五回変わっています。東京杉並区沓掛小学校に入学し、卒業したのもやはり杉並区の桃井第二小学校...