1. HOME
  2. ブログ
  3. “6月15日” 「蚤の目大歴史366日」 蚤野久蔵

“6月15日” 「蚤の目大歴史366日」 蚤野久蔵

*1908=明治41年  崎陽軒が横浜駅構内で開業した。

4代目の横浜駅長だった久保久行が退職後に開業した。周囲に遠慮して当初は奥さんの名義で営業許可を願い出た。屋号は久保が長崎出身なのでその漢文風美称「崎陽」から。鉄道省からは<お上意識>そのままの「横浜駅構内営業命令書」をもらった。このときの横浜駅(初代)は現在の桜木町駅で、東海道線の延伸に伴い1915=大正4年に開業した横浜駅に名称を譲り改称された。

崎陽軒といえば「シウマイ」が名物だが発売されるのはずっとあと。では何を売っていたかというと牛乳やサイダーなどの飲み物と餅類というからほんの小さな売店だったのでしょうなあ。シウマイは横浜中華街のコックをスカウトして豚肉とホタテの貝柱を使い1928=昭和3年に開発「冷めてもおいしい」をキャッチフレーズにして発売した。上等弁当30銭、並等弁当20銭、お茶5銭の時代に12個入りが1折50銭とミナト横浜のハイカラ味が売り物だった。

余談ながら「シウマイの崎陽軒」として全国的に有名になるのは1950=昭和25年に横浜駅に赤いワンピースを着た「シウマイ娘」を登場させてから。当時は<ウェートレス姿の>と形容されたが今なら<メイド姿の>か。余談ついでにテレビの演芸番組『笑点』の司会者で落語家の桂歌丸師匠の奥さんが元・シウマイ娘だから師匠はシウマイファンかも。

*1944年  ドイツの飛行爆弾「V-1」が初めてロンドンを空襲した。

ドイツ空軍が開発したミサイル兵器で現在の巡航ミサイルの始まり。同じ時期、陸軍も「V-2」を開発しておりどちらを採用するかを決める「長距離攻撃委員会」の試射では「V-1」が2発とも墜落して失敗する不運に見舞われたのに対し「Ⅴ-2」は2発とも命中した。ところがナチスはノルマンディー上陸作戦を許した焦りから両方を実戦配備することに決定しゲッペルス宣伝相は「報復兵器」と名付けた。

すべてが極秘のうちに進められたが連合軍はこの情報をつかみ発射基地を片端から叩いた。これにナチスは移動式発射台を編み出して対抗した。飛行速度が遅く、警戒爆撃機で見つけ次第討ち落とされたがエンジン音から「ブンブン爆弾(buzz-bomb)」とか「飛行爆弾」と呼ばれ、ロンドン市民にとっては心理的にもとんでもない<空からの恐怖>だった。

*1927=昭和7年  彫刻家の土方久功がヤップ諸島の離島・プケノを出発した日の日記である。

6月15日:朝までおかしかった天気がよくなり、風も凪ぐ。
今日は帰るというので朝から支度が忙しい。一昨日作った大きなウム(石焼き=食料)を荷物と共に舟に積み、最後に3頭ずつのウォン(海亀)を生きたまま積んで帆を高く上げると、舟はゆるゆると進み出す。
いよいよ島を離れたのはかれこれ11時近い頃であったろう。初めは風がないのでぎらぎら照る日の下に、海はさざ波ひとつない。しかし大海のうねりは、ちょうど芝居の海の布のようにやわやわと、小さな舟を3尺も5尺も差し上げ、引きおろし、かたぶける。
夕方になって風はだんだんとよくなり、舟足は早くなってゆく。その頃までも小さな島、たった一つのプケノは見えていた。美しい夕方、夕陽、夕照。この大きさと、この美しさとを私たちの使い慣れた、いわば概念のかたまりのような言葉で書き表すことは無駄なだけだろう。そこにはかって何千何万の画家がパレットの上で出したというほどの美しい色は、全部そこにある。光の中の光、光の精をしぼりきったような澄み透った光だ。

東京美術学校(現・東京芸大)彫塑科を卒業し、初等学校の図工科教師としてヤップ諸島のサタワル島で7年間を過ごした。原住民の暮らしに色濃く残る風習やタブーなど民俗学的観察を芸術家の眼で観察した。土方は彫刻家として南洋の風物を一貫したテーマとして追い求めた。制作の合間には南洋をテーマの『おおきなかぬー』『ゆかいなさんぽ』サタワル島の民話からとった『おによりつよいおれまーい』などの童話も書いた。

南洋での14年で土方が体得して終生変わらなかったというものの見方は「人間は、何千何万年生きて死んで来た虫けらの大物だ」。

*1215年  イギリス憲法のもとになったマグナ・カルタがロンドン・テムズ川の館で署名された。

王権に歯止めをかけ封建貴族の伝統的権利を再確認するという内容で、フランス王との戦いに負け続けたジョン王がこれに怒った貴族らに署名することを突き付けられた。

断れば処刑か良くて退位あるのみだったから、やむなくではあったろうが王といえども古来からの慣習法を尊重する義務があり権限を制限されることを文書で確認された画期的な意味合いがあった。現代に続く<法の支配>自由主義の原型となった。

関連記事