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季語道楽⑿ 厳しい冬を迎える前の心にしみる華やぎ 坂崎重盛

昨日、今日、テレビでは紅葉の話題が報じられている。

関東では、なんといっても日光。まさに錦繍、にしきの織物だ。京都では嵐山・渡月橋あたり。かつての東京では、品川・海晏寺、滝野川、あるいは芝・紅葉山。

明治石版名所絵に描かれた品川海晏寺は紅の名所として知られた。周辺の光景や人物の描写が洋画風ににリアル。

明治石版名所絵に描かれた品川海晏寺は紅葉の名所として知られた。周辺の光景や人物の描写が洋画風にリアル。

ぼく自身の体験では、奥多摩・日原鍾乳洞周辺の鮮烈な紅葉ぶりが、しばらくのあいだ、まぶたを閉じても網膜に焼き付いていました。

今回は秋の季語のうち、動植物をチェックしてみましょう。

そうそう、ここしばらく、ジャケットの衿に、鶉(うずら)のバッジをつけていました。鶉は秋の季語ですからね。でも気付いてくれる句友はいませんでした。これも日頃のこちらのイヤミな態度への反応でしょうか。無視されても仕方がない。

ま、そんなことはどうでもいい、本題に入りましょう。

「猪・鹿・蝶」のうち、蝶をのぞく、「猪」、「鹿」は秋の季語。「蛇穴に入る」、同じく、蛇に関わる「穴まどひ」も。

「百舌鳥(もず)」が秋を代表する鳥であることは、よく知られるところ。♬「百舌鳥が枯れ木で鳴いている……」という、かつての歌声喫茶で定番の歌もありました。

元総理の中曽根康弘氏の愛唱歌である、と知ったときは、ちょっと苦笑しました。そういえば中曽根さんもたくさん句を作っていますね。呆然とするような句が多かったような気がしますが。

また、横道にそれました。戻します。「百舌鳥」は「鵙」とも表記する。蛙やトカゲなどを木の小枝やとがったものの先に刺しておく「百舌鳥の贄(もずのにえ)も、もちろん秋の季語。

こちらは芝・増上寺と外出姿の婦人と小僧。芝も紅葉と縁が深く芝紅葉や「紅葉館」、そして芝で生まれ育った尾崎紅葉とか、この石版名所絵にも散る紅葉が描かれている。

こちらは芝・増上寺と外出姿の婦人と小僧。芝も紅葉と縁が深く芝紅葉や「紅葉館」、そして芝で生まれ育った尾崎紅葉とか、この石版名所絵にも散る紅葉が描かれている。

「鶇(つぐみ)」、「鶸(ひわ)」、「鵯(ひよ・ひよどり)」、「懸巣・樫鳥(かけす)」、「鶲(ひたき)」、「鶺鴒・石叩き(せきれい)」、「椋鳥(むくどり)」、「啄木鳥(きつつき・けら)」、「鴫(しぎ)」、「四十雀(しじゅうから)」、「頬白(ほおじろ)」、「眼白(めじろ)」、「雁(かり・がん)」もすべて秋。鳥の名を漢字で覚えるのも脳の体操にいいかも。

ただの「小鳥」も秋の季語。もうひとつ「色鳥(いろどり)」。それこそ、秋に渡ってくる色とりどりの美しい小鳥の総称。

渡り鳥そのものは春でも夏でもいるが、このころの渡り鳥はふつう群で飛ばないが、秋になってやってくる鳥は群をなし、その泣き声とともによく目立つ。ただ「渡り鳥」といえば、秋の季語。これに対し「鳥帰る」となると、こちらは春。

では魚の類を見てみよう。こちらも、物知り漢字テストめく。ま、寿司屋の湯吞みによくありますが。「沙魚(はぜ)」、「鰍(かじか)」、「鰡(ぼら)」、「鱸(すずき)」。「鰯(いわし)」、「秋刀魚(さんま)」、「鮭(さけ)」などは、よく知られる表記。

以上すべて、そのままで秋の季語。鯖の場合は「秋鯖(あきさば)」で秋。

秋は植物の世界も人の目や心を楽しませてくれる。印象深い香りもある。

その代表、「木犀(もくせい)」、「桂の花(かつらのはな)」ともいう。金木犀、銀木犀の二種がある。「木槿(むくげ)」、「芙蓉(ふよう)」も秋。

「桃」、「梨」、「柿」、「林檎」、「葡萄」、「栗」、「石榴(ざくろ)」、「無花果(いちじく)」、「胡桃(くるみ)」、「柚子(ゆず)」、「橙(だいだい)」、「檸檬(れもん)」、「花梨・榠樝(かりん)」などのおなじみの果実はもちろん秋。

植物名の下に「実」とつけば、これも秋の季語が多い。「木の実」はもちろん、「椿の実」、「南天の実」、「蘇枋(すほう)の実」、「藤の実」、「杉の実」、「橡(とちの実)」、「櫨(はぜ)の実」、「樫(かし)の実」、「椋(むく)の実」、「一位(いちい)の実」、「檀(まゆみ)の実」、「楝(あふち)の実」「柾(まさき)の実」、「椎の実」「榧(かや)の実」、「榎(えのき)の実」、「枸杞(くこ)の実」、「山椒の実」「茨の実」、「竹の実」など。

そういえば梨のことを「ありのみ」などといいますね。「なし」は「無し」に通じるので、反対の「あり」に言い換えてる。

葦(あし)は「悪し」だから、反対の「よし」にする。「すり鉢」の「する」は、賭け事などの「する」を連想し不吉なので、「する」の逆の「あたり」で「当たり鉢」。「するめ」も「あたりめ」というのもご存知のとおり──。

などと、またもや横道にそれる。

秋といえば、やはり「紅葉」。紅葉関連では「黄葉」「黄落」「照葉」もある。

こちらも紅葉の景色。描かれている母子の着物姿は七五三詣での一景でしょうか。

こちらも紅葉の景色。描かれている母子の着物姿は七五三詣での一景でしょうか。

それぞれの植物の紅葉、たとえば「柿紅葉(かきもみじ)」、「葡萄紅葉」、「漆(うるし)紅葉」、「櫨(はぜ)紅葉」、「銀杏黄葉(いちょうもみじ)」、「桜紅葉」、「白膠木(ぬるで)紅葉」、「蔦紅葉」など。

では例によって、知らないと、つい間違えかねない季語。前にすでにふれたことがあると思いますが「竹の春」。竹は他の植物とは逆に春から夏にかけて葉が黄変し、落葉。秋には若竹が伸び、親竹も青々と葉を繁らす。

だから「竹の秋」といえば春。ただ「若竹」といえば夏の季語。

もうひとつ、「草の花」。これだって知らなければ秋の季語と断定しにくい。「千草の花」ともいい、(たしか)スコットランド民謡に「庭の千草」という歌がありました。この歌詞の流れは晩夏から秋に至る季節が唄われていました。

「草の花」が秋の季語となっているのは、この季節、野に名も知れぬような草々の花が、冬を迎える前のひととき、美しくひっそりと咲き乱れるからでしょう。では例句を掲げましょう。

草の花ひたすら咲いてみにけり      久保田万太郎

名は知らず草毎の花あわれなり      杉 風

草いろいろおのおの花の手柄かな     芭 蕉

やすらかやどの花となく草の花      森 澄雄

草の花旅に糸針買ふことも        伊東余志子

旅に逢い別れしその後草の花       星野立子

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