書斎の漂着本

書斎の漂着本 (92) 蚤野久蔵 日米會話必携

敗戦直後の混乱の中で文字通り<飛ぶように売れた本>は占領軍兵士たちとの「会話手引書」だった。旺文社の『日米會話必携』もそのなかの一冊である。こちらは父の所蔵していた改訂版で、昭和20年に発刊したのを25年10月に「普及版...

書斎の漂着本 (91)      蚤野久蔵  たらちをの記

内田百閒の『たらちをの記』(六興出版)である。どこの古書店だったか忘れたが変わった題名が目について購入した。自宅に帰って辞書を引くと母親の枕詞「たらちね」の反対語で父親の枕詞を「たらちを」というとあった。装画は百閒お気に...

書斎の漂着本(90)蚤野久蔵 新鬼平犯科帳「誘拐」

池波正太郎の人気シリーズ「鬼平犯科帳」は『誘拐』の連載3回目を月刊『オール讀物』に発表したところで著者の死去により未完となった。帯に「最終巻!」とあるように逝去直後の平成2年7月に文藝春秋から単行本として出版された。ご存...

書斎の漂着本(89) 蚤野久蔵 パイプのけむり

わが国を代表する作曲家でエッセイストとしても知られた團伊久磨の『パイプのけむり』の最初の一冊である。朝日新聞社の週刊写真誌『アサヒグラフ』への連載をまとめて単行本としたもので昭和40年11月30日刊。連載は平成12年10...

書斎の漂着本(88)蚤野久蔵 琵琶湖底先史土器序説

この連載を始めるにあたり「わが書斎には高価な本やいわゆる稀覯(きこう)本の類などはない」と紹介した。事実その通りなのであるが、今回紹介する『琵琶湖底先史土器序説』が滋賀県下の公立図書館などにどのくらい収蔵されているのかを...

書斎の漂着本(87) 蚤野久蔵 二笑亭綺譚(3)

ここ最近の連載はほとんど「一回完結」になっていたのに、今回の『二笑亭綺譚-50年目の再訪記』はこれで3回目を迎えた。私自身が「二笑亭」の怪しい魅力というか魔力に引き込まれてしまったのかもしれない。戦前、この<未完の怪建築...

書斎の漂着本(86) 蚤野久蔵 二笑亭綺譚(2)

渡辺金蔵が「二笑亭」の建築に取りかかったのは昭和2年(1927)である。建築家の藤森照信が『二笑亭綺譚-50年目の再訪記』で金蔵の四男・豊氏を突きとめ、詳しく取材して渡辺家に残されていた当時の家計簿で裏付けた。「十二月十...

書斎の漂着本(85) 蚤野久蔵 二笑亭綺譚(1)

精神病理学者として名高い式場隆三郎(1898-1965)は戦前、東京の下町にあった怪建築「二笑亭」を著書『二笑亭綺譚』などで広く紹介したことでも知られる。建物が取り壊されてから半世紀、『二笑亭綺譚-50年目の再訪記』(求...