おとなはみんな子どもだった

パンツ泥棒          藤野健一

小学五年生の夏休みの事だ。 家の近くにある私立の中学校が、夏の期間中プールを安い料金で一般に開放した。昭和二十年代のことで、まだプールは珍しく、おとなも子供も涼を求めて押しかけた。大盛況で、泳ぐというより水に浸かるだけの...

コロナ感染でよみがえるあの日あの頃   阿部剛

7月4日アメリカ独立記念日、バカでかい星条旗をグランドいっぱいに広げ、さあ、大谷翔平がアストロズ戦先発投手だあ。例によって奪三振ショーで浮かれていたが、エンジエルスのアホ打線が鳴かず飛ばず。結局ボロ負け。毎度のことながら...

昭和の大家族の風景    岡崎正隆

私の幼少期を語るには父のことに触れざるを得ません。なにしろ、私が誕生した時、父はすでに50歳でした。父は明治27年、日清戦争の年に生まれたのです。因みに、芥川龍之介は明治25年生まれ。 父と私の年の差は50歳、パパと呼ん...

そして名古屋の子どもたち    校條 剛

元・新潮社       今回は、私の幼少期の思い出を書いてほしいというリクエストです。 私は小学校を五回変わっています。東京杉並区沓掛小学校に入学し、卒業したのもやはり杉並区の桃井第二小学校...

子どものころのオリンピック    齋藤俊夫

元・電通 私が初めてオリンピックに出会ったのは、メルボルンオリンピックの時で、その時小学校3年生であった。その前はヘルシンキであるが、五歳なのでほとんど覚えていない。メルボルン五輪ではラジオ放送があり、水泳の中継をよく憶...

15の春の記憶   井上 元

環境緑化新聞 編集・発行人 十五歳の頃、私は何をしていたのだろうか。小学校を終え、中・高校生するまでのことを書いてみる。 そうだなあ、彼女と出会ったきっかけは、母が交通事故で入院したことであった。母子家庭でただ一人の働き...

色は匂へど散りぬるを我     梶屋隆介

「恋」の記憶というものは、その時の「あなた」を思い出せる、思い出したいということだ。だから、思い出せない「色の事」は「恋」とは呼ばない。 甘かろうがしょっぱかろうが、香しかろうがそうでなかろうが、記憶されていれば「恋のむ...

北国から  石井紀男

石井紀男 昭和十五年一月一日生 北海道上川郡剣淵町出身 中央大学文学部仏文科卒 フリーライターを経て徳間書店に入社、文芸編集部門を担当、退職後コニカミノルタのPR誌『月刊遊歩人』の編集を経て、現在に至る。  ...